
「伊」にんべんを取った漢字、それが「尹(いん)」です。
シンプルな形ですが、正す・治めるといった意味を持ち、古代中国から伝わる由緒正しい文字として名字や歴史上の人物名にも登場します。
しかし、日常ではあまり見かけないため「どう読むの?」「どうやって入力するの?」と迷う人も多いはずです。
本記事では、「尹」の読み方や成り立ちをわかりやすく解説しつつ、名字や歴史的な用例、さらにパソコン・スマホ・テプラでの入力方法まで詳しく紹介します。
珍しい漢字を正しく理解し、スムーズに使えるようになるための総合ガイドとして、ぜひ最後までチェックしてみてください。
伊 にんべんなし の漢字「尹」とは?

「伊」のにんべんを取った漢字、それが「尹(いん)」です。
シンプルな形ながらも、古代中国から受け継がれてきた由緒ある文字で、現代でも名字や地名などに使われています。
この章では、「尹」の読み方と意味について、わかりやすく解説していきます。
読み方(音読み・訓読み)
「尹」は、音読みで「いん」、訓読みでは「ただす」「おさ(める)」と読みます。
読み方のバリエーションは多く、名字などでは特殊な読み方をされることもあります。
| 読み方の種類 | 例 |
|---|---|
| 音読み | いん |
| 訓読み | ただす、おさ |
| 名字での読み | い、いし、せい、ゆん など多数 |
特に名字で使われる場合は、読みが多岐にわたるので注意が必要です。
人名や地名で見かけたら、その場で調べるのが確実です。
意味・用法の違いとニュアンス
「尹」には、主に以下の3つの意味があります。
- ただす(正す):秩序を整える、調和を保つという意味
- おさ(長官):古代中国における行政官の役職名
- 姓(名字):東アジアを中心に広く見られる姓のひとつ
たとえば、「京兆尹(けいちょういん)」は、中国の都を治める長官を表す語句です。
このように「尹」は秩序と統治を象徴する漢字だと言えるでしょう。
また、「尹」という字は名前には使えないものの、名字や歴史的名称で登場することが多く、知っておくと便利です。
字形・成り立ち・漢字データで見る「尹」

「尹」は一見シンプルな形をしていますが、その背後には深い歴史と意味が込められています。
この章では、漢字としての成り立ちや構造、データとしての数値的な特徴を総ざらいしていきます。
部首・画数・書き順
まずは、漢字の基本情報から確認しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部首 | 尸(しかばね) |
| 画数 | 4画 |
| 書き順 | 縦線 → 横折れ → 短横線 → 下のはらい |
「尹」は「尸」が部首として登録されていますが、形だけ見るとどこが「しかばね」なのか疑問に思うかもしれません。
実は、部首の分類は形状よりも起源や意味に基づいていることも多いんです。
見た目だけで部首を判断すると混乱しやすいので注意が必要です。
文字の成り立ち・解字(象形・会意など)
「尹」は、「|(指揮棒)」+「又(手)」という会意文字です。
つまり、手に指揮棒を持って指示を出す様子を表しています。
これが「統治する」「正す」という意味に繋がっていったわけですね。
古代の甲骨文字にも「尹」に近い字形が見られ、当時からリーダーや統率者を象徴する文字であったことがわかります。
Unicode・文字コード・検字番号
最後に、「尹」の文字コード関連のデータを見ておきましょう。
| 分類 | 値 |
|---|---|
| Unicode | U+5C39 |
| JISコード | 1-43-68 |
| 区点コード | 3929 |
| 検字番号(大修館) | 1535 |
Unicodeや区点コードを知っておくと、特殊文字が変換できない場合にも入力方法がわかるので便利です。
特に印刷やデータ処理の現場ではコード情報の正確さが重要になります。
「尹」が使われる名字・名前・歴史的な用例
「尹」という漢字は、常用漢字や人名用漢字には含まれませんが、名字や歴史的名称として今でも広く使われています。
この章では、現代日本の名字における「尹」の使用例と、その歴史的背景について見ていきましょう。
「尹」一文字の名字・読み例
「尹」は、なんと一文字でそのまま名字として存在しています。
| 名字 | 読み方 | 全国順位 | 推定人数 |
|---|---|---|---|
| 尹 | いん、い、いうん、いし、せい、ゆん、わん など | 約7,712位 | 約1,100人 |
読み方の種類は10パターン以上もあり、地域や家系によって大きく異なります。
特に朝鮮半島由来の姓として多く見られるのが特徴です。
都道府県別に見てみると、以下のような分布が見られます。
| 都道府県 | 推定人数 |
|---|---|
| 東京都 | 約300人 |
| 大阪府 | 約180人 |
| 兵庫県 | 約140人 |
| 神奈川県 | 約100人 |
| 埼玉県 | 約50人 |
都市部に集中している傾向があり、特定の地域にルーツを持つ人々に多いことがわかります。
他の漢字と組み合わせた姓・名
「尹」に別の文字がついた複合姓も、非常に珍しいながら存在します。
| 名字 | 読み方 | 全国順位 | 推定人数 |
|---|---|---|---|
| 尹戸 | みなと | 約86,871位 | 約10人 |
| 尹本 | いもと | 約90,411位 | 約10人 |
どちらも非常に希少で、全国でも片手で数えられるほどしか見つかりません。
特に「尹本」は、奈良県に多く見られ、「井本」などとの関連性も指摘されています。
歴史人物・地名に登場する「尹」
「尹」は歴史書にも度々登場します。代表的な人物・地名を見てみましょう。
| 名前・地名 | 読み方 | 備考 |
|---|---|---|
| 尹喜 | いんき | 老子から『道徳経』を受け取ったとされる関所の長官 |
| 尹焞 | いんとん | 南宋時代の道学者 |
| 尹文子 | いんぶんし | 戦国時代の思想家、著書『尹文子』 |
| 藤原伊尹 | ふじわらのこれただ | 平安時代の摂政・太政大臣 |
| 真田信尹 | さなだのぶただ | 真田家を支えた幕僚、歴史小説でも人気 |
| 河南尹 | かなんいん | 中国・洛陽近郊の行政地名 |
このように「尹」は、政治・思想・文学などさまざまな分野で登場します。
歴史を学ぶ上でも知っておくべき重要漢字のひとつです。
「尹」をパソコン・スマホ・その他機器で入力する方法
「尹」は日常でよく見かける漢字ではないため、どうやって入力すればいいのか迷う方も多いと思います。
この章では、パソコン・スマホ・ラベルプリンタなど、さまざまな機器で「尹」を入力する方法を丁寧に解説します。
パソコン(Windows・Mac)での変換・コード入力
まずは、もっとも一般的なパソコンでの入力方法から見ていきましょう。
| 方法 | 操作手順 |
|---|---|
| かな入力変換 | 「いん」「ただす」「おさ」などと入力 → 変換候補から選択 |
| 単漢字入力 | IMEパッドなどで単漢字検索 → 直接選択 |
| Unicode入力(Windows) | 「5C39」と入力 → F5キー(IMEによってはAlt+X) |
変換候補に出てこない場合は、Unicodeを使うのが確実です。
スマホでの入力(iOS/Android)
スマホでも「いん」や「ただす」と入力することで、「尹」を出すことができます。
注意点としては、キーボードの変換候補に表示されるまで少しスクロールが必要なことがあります。
| OS | 操作手順 |
|---|---|
| iOS(iPhone) | 「いん」「ただす」「おさ」などと入力 → 候補をフリックで探す |
| Android | 同様に入力し、候補が出るまでスクロールまたは手書きモードで探す |
手書き入力を使えば、形から検索することもできます。
読めないときは手書きで探すのが最短ルートです。
ラベルプリンタ・テプラ等での入力・登録
オフィスや家庭で使われるラベルプリンタ(テプラ)にも、文字の収録状況が機種ごとに異なります。
| 機種 | 対応状況 |
|---|---|
| PRO SR300(下位機種) | 非対応(尹は未収録) |
| PRO SR530(上位機種) | 対応済み(区分コード:5390) |
テプラなどの機器で使いたい場合は、事前に取扱説明書やサポートページで収録漢字を確認しておくと安心です。
収録されていない機種では、代替文字を使うか、別の方法で印刷する必要があります。
注意点・類似漢字との混同に気をつけたいこと
「尹」は一見すると簡単な漢字ですが、形が似ている他の漢字と混同されやすいので注意が必要です。
この章では、特に間違いやすい漢字との違いと、フォントや変換ミスに関する注意点をまとめます。
似た字(伊・尛など)との違い
「尹」と混同されやすい代表的な漢字に、「伊」「尛(ばく)」などがあります。
それぞれの違いを比較してみましょう。
| 漢字 | 見た目の特徴 | 意味 |
|---|---|---|
| 尹 | 縦線に小さなはね+はらい | ただす、おさめる、姓 |
| 伊 | にんべん+尹 | 人に関する意味。「イタリア」の略称にも |
| 尛 | 小を三つ重ねた形 | 「小さい」を強調した古語的表現 |
特に「伊」は、「尹」の左側ににんべん(亻)がついただけなので、誤読・誤変換されやすいです。
反対に、「尛」はあまり一般的ではありませんが、デザイン上で誤植されることもあります。
変換ミス・フォントでの見え方の注意
変換ミスやフォントによる表示の違いにも気をつけましょう。
特に以下のような場面では混乱しやすくなります。
- 文字コードが異なる文書間でのコピペ
- 古いソフトやフォントで表示したとき
- 外字(ユーザー定義文字)として登録されている場合
また、「尹」が対応していないフォントでは「□」や「?」などに置き換わる場合もあります。
これを防ぐには、以下のような対策が有効です。
| トラブル | 対策 |
|---|---|
| 変換候補に出ない | Unicode(U+5C39)で直接入力する |
| フォントで表示されない | MS 明朝、游明朝、IPAフォントなどに切り替える |
| 外字と重複する | 文字コードの確認・差し替えを行う |
「尹」を正しく表示・入力するには、文字コードとフォントの理解がカギになります。
まとめとワンポイント豆知識
ここまで「尹」という漢字について、読み方や意味、名字や入力方法などを総合的に見てきました。
最後に内容を整理し、さらに覚えておくと役立つ豆知識を紹介します。
これまでのポイント整理
| カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| 読み方 | 音読み「いん」、訓読み「ただす」「おさ」、名字では多彩な読み |
| 意味 | 正す、治める、長官、姓 |
| 成り立ち | 「|(棒)」+「又(手)」=采配をふるう姿を表す |
| 名字 | 「尹」単独で約1,100人、「尹戸」「尹本」などの複合姓は希少 |
| 入力方法 | 「いん」で変換、Unicode「U+5C39」で直接入力も可能 |
まとめると、「尹」は統治や秩序を象徴する古代由来の漢字であり、現代でも名字や地名などに形を残している貴重な存在です。
ワンポイント豆知識
- 「尹」を部首に持つ漢字はほとんど存在しないため、辞書で探すときは注意が必要。
- 「伊」と混同しやすいが、意味の広がりは大きく異なる。
- 韓国や中国では今でも姓としてポピュラーで、日本より認知度が高い。
ちょっとした知識として、「尹」を知っているだけで、歴史や名字の話題で会話が広がることもあります。
特に名字研究や漢字クイズ好きな方には必須の知識と言えるでしょう。
ぜひ今回の内容をきっかけに、普段目にする漢字にもじっくり注目してみてください。